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2009年5月31日日曜日

「断らない力」もあるはずだ(6)完

勝間さんがいう「断る」は、単に断るのではなく、流れにそうだけではなくて、もっと自己主張をすべきということを啓蒙しているのだし、私が、「断らない」というのも、安易に受け入れればいいというのでもないという意味で、勝間さんと私の位置はそんなに遠くないのかもしれない。
もちろん、断るかどうかは、能力の問題という以前に、仕事の需給状況に依存する。仕事がなければできる限り断らないであろうし、仕事が手いっぱいであれば、断りたくなるのは当然である。
基本的に、多くの仕事をしようとしても、資源には限りがあるので、優先順位をつけて、価値の高い仕事に集中するというのは業務やビジネス遂行の基本であるといってもよい。
しかし、この議論には2つの点が重要である。
第1に、資源は有限ではあるが、人の能力と生産性には大きな相違がある。仕事をうけても、それをタスクに分解し、優先順位をつけ、過剰品質にならず、不要な仕事を排除するのは当然として、さらに、本人がノウハウや情報が不足していれば、他に人に依頼することは通常のことである。その際に交渉する能力の有無が生産性に大きくかかわっているというのも常識である。つまり、自分の能力以上の仕事を実施できるかどうかも、またその人の能力である。
第2に不確実性をヘッジしておくことが不可欠である。その仕事が、今日、価値のないとおもっても、あすには、価値を持つこともあるしその逆もありうる。とすれば、簡単に断るのではなく、受け取るか、保留にしておいて状況を見ながら最終判断するというのもきわめて重要である。日本のビジネスピープルには「やりすごし」の能力が備わっているといった人材管理の研究者がいる。つまり、依頼者が本気で依頼する時もあるし、大した気持もなく依頼する時もあるのでしばらくやり過ごせる能力が業務遂行上きわめて重要だと主張している。であれば、断らずに、とりあえず受け取っておき、依頼者の顔色を見ながら最終判断をするというのも、賢い手段であろう。完璧な資料を作るのではなく、不十分な報告書をあえて出して、依頼者の本気度を探るというのも、現場でしばしば見かける処世術である。
まさしく、断るということにこだわらなくても、また、断われないから受け取るのではなくあえて、断らないことで、自分の能力を誇示し、能力向上の機会を探るというのは、まさしくありうることなのである。

昔、ある野球選手がこういっていた。ベンチからセンターの選手に、「前にでろ」、という指示があったら前にでて、また「後ろにさがれ」、とわれたら、とりあえず後ろに下がり、でも、結局、自分が正しいという位置に移動して守るんだと。最後は、結局、自分の仕事なんだからと。

1 件のコメント:

清 さんのコメント...

この本を読んでみたくなりました。

自分はまだそんなに仕事をお願いできる立場でも、断れる立場でもないですが、そういう局面になったときの処世術を身につけられるかな・・・

やはり勝間さんは仕事でもプライベートでも人の何倍も行動する人だというイメージがあるので、その辺は割り引いて読まないといけないのかもしれません。