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2023年3月31日金曜日

EDIの展望(2)

 1.環境変化の動向とサプライチェーンにおけるデータ連携の必要性

日本社会としての大きな環境変化として、少子高齢化、経済安保、さらにグリーントランスフォーメーションがあげられる。さらに言えば、働き方改革、物価高騰による価格転嫁、賃上げ要請も含めてもよい。

企業間業務連携、データ連携の観点からも脱炭素の取り組みはサプライチェーンに沿ってカーボンが積み重なっていく量を測定する必要がありここでは受発注にかかわる基本データが共有すべき基本データとなる。
さらに、製造プロセスの後工程には配送という物流業務が続いており、ここでのデータ連携の不備は、2024年問題といわれるように、ドライバー不足、炭素排出の最小化という、物流の様々な問題を助長することになる。最適配送は、極めて重要な取り組みテーマであって、それには、受発注データとの効果的な連携が必要であることは言うまでもない。
西濃運輸における、内閣府「スマート物流サービス 「地域物流」の取り組み~SIPプログラム~は、生産管理からの出荷情報と、物流における集荷配送計画とを連携する大きなチャレンジである。
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001512971.pdf

また、中小企業への賃上げ要請が政府、経済団体より、提起されているが、いわば、「無い袖は振れない」であり価格転嫁が全企業に広がるはずもなく下請け構造においては、価格転嫁できる企業、製品サービスは限定されざるを得ない。もちろん、事業再構築こそ、中核的なテーマであるが、基本は財務基盤の強化にあり、そのためには売掛債権の早期回収、資金回転を円滑にするEDI、とりわけ受発注とインボイス発行、送受信の効率化というバックオフィスの生産性向上が、喫緊のテーマである。
インボイスは、中小企業に負担を強いるものであるとして、特に小規模企業の対応遅れが問題視されているが、少なくとも小規模企業のデジタル化への重要な着手点になりうるのであって、この機会を見逃すことは、日本にとって大きな損失でもある。岐阜県の「デジタルインボイス活用モデル推進事業デジタルインボイス連携基盤(岐阜モデル)構築・実証事業」は、小規模企業を巻き込んでのデジタル化を支援する試みとして注目したい。

さらに、日本のものづくりの強みで会った品質に関して、品質不正などの問題が生じ、その影響はSNSなどの急速な伝播を前にして、迅速な情報対応が元得られている。すなわち、最終製品の品質不良を迅速に部品、材料にまでさかのぼって企業を探索し、どの工程で生じたかを解析しなければ、効果的な対応ができるはずもない。製品の部品表とサプライヤー、工程、製造日時、ロットの識別などがデータで識別され化ければならない。それは製造データだ絵でなく受発注データとつながっていなければならない。
その解決に向け、中部品質管理協会・IoT時代の品質保証研究会の報告書『2030年の品質保証~モノづくりからコトづくりへ~』さらに、(株)ジェイテクトの事例報告などの取り組みを参照したい。
https://iv-i.org/wp-content/uploads/2020/03/symposium2020-spring_08-2.pdf

これらにみるように、受発注の情報、すなわち商流情報は、受発注業務処理のためのものだけではなく、サプライチェーンにかかわる基本情報であることを再認識したい。

2.事例調査、分科会活動から導出された所見
今回の事業において、いくつかの事例研究と3つの業界の協力を得た分科会での討議を行った。それらからの所見をまとめる。
事例研究は、主導する主体によって特徴づけられる。燕市での取り組みには市町村が主導する域内中小企業の取引支援であり、門真プラットフォームは地域の受注側の中小企業が主導している。住友商事は発注者主導で取引先との情報共有を促進している。三菱商事も、素材商社として取引先との連携を支援している。TWX21は、日立グループの取引先との情報共有。とりわけ品質情報の共有に取り組んでいる。
このように、自由参加のオープンなコミュニティではなく、一定の企業間関係による限定的な連携によって構築されている。それは、単にデータ交換が目的ではなく、それを用いたビジネスマッチングなど、参加者、企業間での効果的な付加価値サービスを伴なっている。すなわち、このサービスを必要とする参加企業にち負っては価値であるが、そのサービスにメリットを感じない参加企業にとっては、負担でしかないという利害関係の共有が基礎となっている。いわば参加することの利益を共有するコミュニティの存在が、共通基盤の存在を合理化している。このような利害を共有する関係をセミクローズなコミュニティと呼んでみる。
参加企業間での利益増大を目指すならば、できる限り付加価値サービスを強化するとともに、業務連携を強化することによって、マッピングレスの連携となり運営コストが低減されることが期待できる。このようなコミュニティは、決してオープンでなく、参加、退出に関する一定のルールに基づいている。
マッピングレスとは、業務間、データ間でのする合わせをすることなく、データ交換を可能にする。かつてERPが輸入されたときベストプラクティスと呼ばれる標準的業務のアプリを使用することが奨励された、しかし、現在の業務との乖離が大きかったためフィットアンドギャップという擦り合わせ、カストマイズが相次ぎ、それが標準的導入手法とさえ言われた。その禍根が、2024年の崖、となるDXが提唱される直接の要因とされている。
らと名が提供するアプリ基盤はそのような業務連携を標準アプリを使用することによって容易なデータ連携を可能にするかもしれない。幸運なことにクラウドアプリは、マルチテナントアーキテクチャを採用しているため個別ユーザーでのカストマイズを原則として、許容しない。ユーザーサイドでの変換に頼ることになる。ラトナの取り組みが大きな基盤に与える影響は決して少なくない。分科会での活動は、極めて地道に、業界でのデータ項目の洗い出しを続けている。
ラトナのような標準的なアプリが整備されたからといってすべての中小企業がすぐにそれを実装するわけにはいかない。それは自社でできても取引先企業があり、特にそれが発注企業であれば、余計にその間をマッピングしなければならないからである。
したがって企業間での項目の共通認識、標準化作業、意味を共有した辞書作成、それなしにはマッピングレスに到達しない。ERP導入におけるカストマイズの連鎖を繰り返すのみである。
今回の分科会活動における共通項目の抽出、ひょうじゅんかへの取り組みはそのための意一里塚で会って決して到達点でhないことを、討議に参加したメンバー自身が任したことは大きな成果であり、各分科会とも、継続的活動を要望していることがその証左である。

3.共通基盤に求められる諸要件
共通基盤の価値はすなわち、活用及び運用における大きな価値は、any to any の取引を開始する際の準備時間が最小化できることであり、運用に際して、人手を介すことのないシステム間の自動取引を最大化できることにある。
事例にみるように様々な利害関係にあるコミュニティが共通基盤を介して取引を行おうとする大きな潮流を発見した。では、これらのコミュニティが増えれば、あるいは淘汰され、統合されれば、共通基盤として十分であろうか。
一つは、共通基盤の参加者は単一の共通基盤に依存するのではなく、複数のコミュニティに参加することは、普通のことである。そのような事態において、webEDIで生じたような多画面問題が必然的に発生する。其れを避けるには共通基盤が提供するサービスではユーザーインターフェースを提供するのではなくAPIを介してデータを提供し、ユーザー側でのアプリ、例えば、ERPなどのパッケージアプリに、ユーザーインターフェースをゆだねることである。複数の共通基盤からデータが提供されていても、ユーザー側のアプリの画面で一元的にオペレーションが出来るようにする。それが個別の共通基盤の必須要件である。

では、個別の共通基盤があれば、かつユーザー側でのユーザーインターフェースが確保されていれば、十分であろうか。各コミュニティは。提供される付加価値的なサービスを共有、又は共同利用している。もちろん、別のコミュニ敵に参加してそのサービスを利用するとすれば、サービス間のデータ連携はユーザー側で行うことになる。例えば、受発注から出荷までの企業間の取引のサービスを受けた後に配送業者に週かを依頼するとしてそのデータを各企業がするよりも、受発注の共通基盤から配送業者にデータ連携する方が効率的な自動的な処理を志向できる。つまり共通基盤同士がシステム間取引を行うことで、かつそこにAIを活用することで、タイミングよく業務連携が、人手を介さず可能になるかもしれない。
さらに重要なことは、別の基盤い参加している企業が本当に実在している企業かどうか、信頼に足る企業かどうか、データ連携するための重要な要件である。そのすべてを個別共通基盤で担うのは、かなりの負担であるし、リスクもある。配送業者からすれば、ほんとうに、その集荷注文は、実在するのか、電話がかかってくるならまだしもシステムからAIが自動集荷注文が出されたとすれば、それは、明確な注文データによる出荷であることを同時に証明することで注文の実在性が担保される。
同じように、インボイス、すなわち適格請求書が発行でき、それに基づく、銀行振り込み処理が金融機関とのAPI接続によって実現できる基盤盤サービスがあったとして、それが正しく注文されたものかどうかは、別の受発注基盤にアクセスして照合しなければならない。従来それらを人が介在していたことであるが、その自動化の取引では、別の共通基盤で認証しなければならない。つまり注文番号と請求番号のID連携が必要である。
私たちが提起している産業データ連携基盤とは、個別企業が直接利用するよりも、これまで個別に構築され、運用されてきたコミュニティごとの共通基盤サービスをサポートして相互につなぐことを容易にする共通基盤であると考えて良いだろう。

今回のスタディから、様々な共通基盤が様々な付加価値的サービスを提供しており、それは完全にオープンな参加者というより地域、業界、企業グループなど、一定の制約のなかで、信頼と認証がなされており、いわばセミクローズなコミュニティをベースとしたサービスであることがわかる。
それらは、統合や淘汰もされるであろうが、参加者に価値をもたらすコミュニティサービスが持続し、その基盤どうしを効果的につながることが、私たちが進めている産業データ連携基盤に求められる根源的な役割であると考える。

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