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2019年12月8日日曜日

「中小企業 本当に要らないのか」を論じる


 あるビジネス雑誌に、「中小企業は本当に必要?」という特集が掲載されました。この中で、赤字企業は補助金ばかり得ていて業績が改善しないいわば死に体のゾンビ企業だから、早く退出すべきだという主張を掲載していました。たしかに、私たちがお付き合いしている企業でも、きちんと経営しているのだろうかと思われる企業がないとは言いませんが、大半の経営者は、苦労しています。
したがって、赤字企業を排除すべきとする議論は安易な危険な思想だと思います。例えば、学校で、優秀な生徒とそうでない生徒とを分け、能力別クラスを作ることがしばしば話題になります。一見、効率的に見えます。しかし、その結果は燦燦たるものといわざるを得ません。人間は成績だけではありません。人それぞれ性格があり、得意なことがあり弱いところがあります。つまり多様なのです。それを偏差値で並べてしまうと、自分より成績が低い人を下に見る人格が形成されがちです。それは差別意識につながり若者の人格形成に悪影響を与えることは明らかです。若いうちから社会にはいろいろな人がいるという認識は非常に大事です。
また、障害者福祉施設での大勢を視察した加害者は、障害者は不要だとする点で同じような考え方といえます。一つの見方で社会に散って不要だとする考えは危険なものがあります。さらに言えば、ヒットラーは、ナチズム(選民主義)を主張し、世界の中で一番優れた自分の民族が主導すべきと唱え、世界を支配しようともくろみユダヤ人の大量虐殺に至りました。
一枚の絵を幾つかの小片(ピース)に分解して、分解した物を再び組み立てるというジグソーパズルでは、たとえ小さなピースがなくても成り立ちません。空白ができてしまうからです。地方の中小企業にも、地域の1ピースとしての一定の役割、存在意義があるものです。たとえ赤字であっても、街の店が廃業すれば、その一帯が暗くなって治安が悪くなります。どんなに赤字であっても、顧客がいるし社員がいるし、取引先もいる。安易に排除することは地方のエコシステムを壊すことにつながります。儲かっていない地方の中小企業の退出を促すことがいかに地方を疲弊する仕業となるかを考えれば、私たち支援者や支援機関は、一社たりとも廃業させてはならないという覚悟と意識を持って中小企業の支援に当たらねばならない。必要なのは、排除ではなく支援なのだと。 

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