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2010年9月7日火曜日

武井淳 「ビジネス構造化経営理論」


武井淳執筆による 「ビジネス構造化経営理論」 を読んだ。


 大著であり、なかなか読みこなすのに大変だが、ビジネスを情緒的でなく構造から 理解し、その変革を提起している姿勢に共感を覚える。 日本では米国に比べて、なぜか、実務と学界の距離がなかなか縮小しないのが現実で、 努力の割に進まない。 このように実務家が単なる事例紹介を超え、多くの理論を踏まえた、いわば研究成果 として出版されることは、ほんとうに喜ばしい。
 学界はこれまで、このような、特にコンサルの手になるものを軽視しすぎていた。 しかし、学界が実証主義的研究が過ぎて、こまかいいわゆる重箱の隅をつうくといわ れて久しいが、それでなければ業績とみなされず、学会誌にも掲載されないとい う制度上の問題を克服できていない以上、多くを期待する訳にはいかない。
 コンサルの強みは、いうまでもなく、実際の企業の生の声、そして、人間が経営して いるという感触を肌で得ている点である。しかし、それを、そのまま書くというのもま た、学界との距離をちぢめることにつながらない。 今回のような理論を踏まえながら、あくまで最適化、全体性を重視した論考にこそ、 価値があると考える。 たとえば、「事例主義からの脱却」には非常に共感を覚える。エクセレントカンパ ニーの事例研究はそれなりに価値はあるが、それが汎用化されうるのか、企業 のコンテキスト、資源ベース風にいえば経路依存性(その企業の歴史をふまえた)を、 十分、認識しなければ、安易に参考に出来ないはずである。そこに、解釈や、志向性( 働きかけ)のはいる余地が十二分とあると考えるからである。
 構造化理論はある意味で客観性重視であり、構造改革のためのものである。 この本が、日本の経営も大きな貢献をするとともに、日本のコンサルビジネスの発展に寄与 することを願ってやまない。

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